『タワマン節税』の効果が薄くなります

いわゆる『タワマン節税』と言われる、富裕層が高層マンションを購入し相続税を減らす手法の効果が減ることになりました。

マンション相続などで大幅節税 評価額を市場価格の最低6割に
2023年6月26日 22時39分 [NHK]
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230626/k10014110071000.html

タワマン節税とは

市場価格と比較して相続税の評価額が低いことを利用し、富裕層が高層マンションを購入し相続税を軽減させる手法です。
マンションの場合、自分の敷地面積の割合は全体の敷地面積を戸数で分けるため、戸数が多い高層マンションになるほど1戸あたりの土地の持ち分割合は小さくなります。

(例)仮に広さや間取りが全く同じ一室の①3階建てと②10階建てのマンションでいずれも一つの階に10戸ある場合、それぞれの1戸の土地の持ち分割合は、以下のようになります(今回は何階かの高さは考慮に含めないことにします)。

①戸数:10×3=30 → 30分の1
②戸数:10×10=100 → 100分の1

高層マンションの上の方の階は、見晴らしもよく人気があり実勢価格は下がりにくいケースも多いですが、相続税を計算するうえでの評価額は低くなるため、そこに目を付けて富裕層が相続税対策として高層マンションを購入するケースが増えていました。

国税庁の資料によると、
市場価格 1億1,900万円
従来の相続税評価額 3,720万円
→ 乖離率は3.20倍
というケースもありました。
(東京都、総階数43階数、所在階数23階、築年数9年、専有面積67.17㎡)

上記の場合、極端ですが1億1,900万円あり資産が現金かこのマンションのいずれかの場合、相続人が子供1人だと、相続税は以下のようになります。

市場価格のまま(1億1,900万円) → 1,790万円
マンション(従来の評価額3,720万円)→ 12万円

約1,778万円の軽減効果が得られていました。

これが、今回の変更で次のように変わります。

従来の方式今回の改正
マンションの評価額3,720万円7,140万円
相続税12万円508万円

上記のマンション投資例の場合、従来なら相続税は12万円となっていたのが今回の変更で508万円+496万円)となる計算です。
1,790万円が508万円に軽減されるならそれでも十分と思えるかどうかは人それぞれだと思いますが、おそらく多くの方は1,790万円12万円に軽減される部分を強調して聞いていたと思いますので、それが508万円に上がるとなると『そんな話聞いていない』や『そうなるなら買わなかった』と思われる方も多いのではないでしょうか。

なぜこのような手法が成り立っていたか

現行ルールは、1964年の国税庁通達に基づくものでした。当時はタワーマンション自体がありませんでしたので、現在のような対策が行われることは当然ながら想定外だったはずです。
(ちなみに、日本初の分譲タワーマンションは、1976年に建設された「与野ハウス」のようです)

法律が実態に追いついていないところに目を付けた人たちが、節税対策として行っていたようです。

しかしながら、そのような対策をする人が増えてくれば国税庁も気付き、見直した、というのが今回の経緯になると思います。

法律や制度は実態に合わせて変化するもの

法律や制度は実態に合わせて変化するものです。
マンションを買うときには使える制度でも、相続が発生するときまでに今回のような変更が入ると、相続時に使えるかはわかりません。
相続が発生する時期や制度がいつどのように変わるかなど、将来のことが断定できるなら対策を確実に行うことは出来ますが、残念ながら今回のようなことで将来を断定できる人はいません。

気になるのは、マンションを購入された方が、将来税制が変われば購入時の制度は使えないかも知れないリスクを承知の上での購入だったか、です。
購入時のセールストークはあくまで購入時点の話が将来もそのままだったらの『仮定の話』の話なので、将来的に税制が変わらなかったり変わっても購入済み分は従来の制度を利用できるなら結果オーライとなりますが、言葉通り、あくまで『結果オーライ』になるかどうかなので購入時点ではわかりません。

今回のような制度変更が行われ、もし購入時のメリットが使えないなら買わなかった、と思ってもそれが『知らなかった』かどうかに関係なく購入を取り消すことは通常は出来ません。
金額が僅かで制度がどのように変わっても影響が軽微な話ならそれほど気にならないかも知れませんが、相続対策の不動産投資となると、金額は大きい上にイベントの発生時期が不透明で制度変更が行われる可能性や行われた場合の影響は大きいと思われます。

中立の立場でアドバイスする人にも相談を

マンションの販売業者は販売による手数料収入が収益源となりますので、売れない方向になる後ろ向きな話は積極的には言わないと思います。
私ももし不動産業者と提携し相談料が無料で不動産のアドバイスをする立場なら、不動産業者側の立場に近く販売成約に誘導するアドバイスをすると思います。理由は簡単で、私の売り上げは販売成約時の手数料からいくらかを受け取るはずだからです。

しかし、私はそれでは『お客様と同じ立場にたったアドバイスが出来なくなるのでは』と思っていますので、私は販売業者からの手数料のキックバックではなくお客様から相談料を頂いていますので、手数料のための提案ではなく相談料を払っていただくお客様の立場にたったアドバイスが出来ます。販売業者からは積極的に教えてもらいにくい話も、私は誰にも忖度せずお伝えすることが出来ますのでむしろそういうリスクの話は出来るだけお伝えするようにしています。

お金のことに関して、耳障りのいい話だけではなく本当のところ他にもっと知っておくべきリスクとかを聞きたい、と思われる方は個別相談にてお伝え致しますのでお気軽にご利用ください。

※金額は概算です。

参考資料

マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について
国税庁
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023001-051.pdf