イオンの賃上げは働く人の収入増に直結するでしょうか

イオンは、パート約40万人の時給を平均7%引き上げるとのことです。
政府は賃上げを要請しており、イオンの今回の賃上げは政府としても満足すべきことだと思いますが、思う通りになるでしょうか。

イオン 非正規社員の賃金 平均7%引き上げへ パートなど40万人
2023年2月1日 20時35分 (NHK)

単純に賃上げが収入増に繋がればいいですが、まずは数字を確認します。経済的には相当なインパクトです。

時給の仮定

最低賃金は都道府県で異なります。東京は1,072円、最低は愛媛等で853円となっており、便宜上1,000円とすると、今回の平均7%は70円の時給増と仮定できます。

試算

パートは約40万人と言うことで、1人あたりと40万人とそれぞれ計算します。

(勤務時間の前提とその試算結果)

1人40万人
1時間70円28,000,000円
4時間/1日280円112,000,000円
5日/1週間1,400円560,000,000円
4週間/1カ月5,600円2,240,000,000円
12カ月/1年67,200円26,880,000,000円

働く人は自分だけで計算すると年収は7万円近く増える計算ですが、雇う側は40万人分になるので、1時間で2,800万円、年間で269億円近くのコスト増になります。

イオンは、先日2022年3~11月期の連結決算を発表し、営業利益は1,126億円で最高益を更新しています。
年度の3/4での業績ですので単純に年間に換算すると約1,500億円となりますが、人件費増は営業利益を下げることに繋がり、割合では営業利益の約18%に相当します。
それだけ業績を下げることになってでも働く人に還元するイオンですが、果たしてその通りなるでしょうか。

“年収の壁”に合わせた勤務時間の調整

時給が上がっても、年収の壁に合わせて働く時間を調整する人は結構多いと思います。

 時給×勤務時間=給与

なので、時給が上がっても給与を変えないようにしようと思うと勤務時間を減らすことになります。
その分時間が出来るという見方も出来ますが、雇う側にとっては全員がそうすると雇う人を増やさないといけなくなります。同じ時給でも慣れている人に仕事してもらった方が雇う側にとってはいいと思いますが、年収の壁で働く時間を減らすと慣れていない人でも人を増やす必要に迫られてしまいます。誰が働くかに関係なく時給を上げることで支払う人件費は増える企業にとっては“年収の壁”はメリットではなくデメリットになるかも知れません。

政府が企業に求めている賃上げが労働者にとっても雇う企業にとってもメリットになるためには、“年収の壁”の見直しも早急に進める必要があると思います。

政府 “年収の壁” 対応策の検討進める方針
2023年2月2日 5時28分(NHK)