自筆証書遺言書保管制度を実際に利用してみました
きっかけ
私自身、この1年間に近親で3人の方が亡くなりました。
いずれも相続税は発生しない相続でしたがそのうち2人は突然の他界で、“もうそろそろかも知れないから準備をしようか”と身辺整理をする余裕はありませんでした。
その為、実際に相続手続きに手伝いも含めて携わった時、どこに何があるか分からない・スマホにパスワードロックがかかっていて中を見ることが出来ないなどの事態に遭遇し、大変苦労したり断念せざるを得ないこともありました。
その経験を踏まえ、相続に関連するサポートをFPとして何か具体的にしたいと思うようになりました。いろいろ考えた時に「自筆証書遺言書保管制度」なら普段のライフプランニングの延長線上でサポート出来ると考え、ご案内するためには知っておく必要があると思い実際に利用してみました。
実際に利用してみて
名前の通り“自筆”で作成した遺言書をご本人が法務局で行う手続きのため、大変なイメージがあるかも知れませんがそんなことはありませんでした。
・自筆は1枚、あとはパソコンで作成
・法務局の窓口で要した時間は約1時間程度
・料金は4,100円(保管制度3,900円+住民票200円(マイナンバーカードを使いコンビニで取得))
で出来ました。これにより受けられるメリットは上記の負担と比べて格段に大きいと思いますので、制度の説明も含めてそれらについてまとめます。
自筆証書遺言書保管制度とは
名前の通り、自筆証書遺言を保管できる制度で、2020(令和2)年7月10日に施行されました。
自筆証書遺言制度は一人で・無料で作成出来るメリットがある一方で、保管制度を利用しない従来の形式では遺言書の存在を確定させることが困難で、一言でまとめると“伝えたい内容が伝わるかは相続人次第”、と言えるような制度です。
保管制度を利用しない従来の自筆証書遺言の主なリスクとして、
・相続人に見つけられない
・複数作成した場合に最新が見つけられない
・内容に不備があり伝わらない
・見つけた人にとって都合が悪い場合に"無かった事"にされることもあり得る
などがありました。
また、2019(平成31)年1月13日までは全て自筆で作成する必要があり、大変な割に目的が果たせるか分からない、と感じる制度でした(それ以降は別紙等をパソコンで作成することが可能になりました)。その為、これらのリスクを回避し家族に確実に伝えるためには一般的に公正証書遺言や遺言を利用することになり、手続きに敷居の高さを感じるだけでなく多額の費用がかかることもあり、相続対策は相続税が必要な富裕層だけのもの、と思われるようになったのかも知れません。
しかし、自筆証書遺言書保管制度が始まったことで、これから作成した遺言書で保管制度を利用する場合、以下のメリットがあります。
・遺言書の一部はパソコンで作成出来る(自筆部分を大幅に減らすことも可能)
・紛失、償却、盗難のおそれがない
・遺言書の存在を誰にも知られず、また知られても誰にも見られない
・万が一の時に行政より指定した人に通知される(死亡時の通知を選択した場合)
このメリットを考慮すると、“伝えたいことを、伝えたい人に、伝える”が出来ることをご認識いただけると思います。それであれば、公正証書遺言や遺言信託までしっかりとした制度でなくても目的を達成することは十分可能と思われる方は多いのではないでしょうか。
手続きの流れ
以下の流れで手続きを行いました。
- 自筆証書遺言書を作成
- 住民票や添付資料等も合わせて準備します。尚、下の法務局の予約が先でも大丈夫です。
- 法務局へ訪問する日時の予約
- 法務局のサイトや電話で予約出来ます。現在姫路は平日の10時~と14時~の2枠です。予約後に法務局から電話がかかってくる場合もあります。
- 法務局へ訪問
- 予約した日時に訪問します。手続き料の3,900円は現金持参で大丈夫です。尚、遅刻は無断キャンセル扱いになる場合がありますので遅れないようにご注意下さい。
- 法務局による内容確認
- 内容確認等が行われ、問題無ければ概ね1時間程度で完了します。
お知らせ
私自身で「自筆証書遺言書保管制度」を利用して感じたことは、これだけ簡単な手続きと安い費用でしっかりとした対策が出来るなら、相続対策を大げさだと思われている方にも、むしろそう思われている方にこそ使っていただきたい制度、です。
相続はいつ発生するか分からない、と言うことを私自身実際に体験し、手続き面で苦労しました。あまり不幸なことは考えたくありませんが、それでももし今自分に万が一が起きたとき、残された家族が必要な全ての手続きをスムーズに出来るか、をだけを考えてもそうではないと思う方がほとんどだと思います。実際の手続きでは、何も指定していない場合はさらにどのように分けるかも残されたご家族で決めることになります。
そこで、近日中に新しいコンテンツを立ち上げます。テーマは、相続に関するものですが、“相続”と言う言葉だと相続税を納めなくて良い方の場合関係ないと思われるかも知れませんので違う言葉にしようと計画中です。
立ち上げる際は、これまでお客様から伺っているご要望等も合わせてサービス内容や料金体系を刷新する予定です。もし気になる方はそのコンテンツを立ち上げる前でもお気軽にお問合せ下さい。
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